「仕組み」を売るウーバー、「真心」を売るMKタクシー

業界の異端児と言われながら、10台で始めたタクシー会社を国内主要都市と上海、台湾でも拠点を構え、業界最大手の企業に育てあげた青木定雄氏が88歳で亡くなったとのネットニュースが流れてきました。

同じく創業から10年あまりで発祥のアメリカから全世界50カ国以上でサービスを展開し、時価総額は6兆円とも言われる、ライドシェアリングの仕組みを構築したウーバーのCEO  トラビス・カラニック氏が無期限の休職とのニュースも同時に目にとまりました。

日米のタクシー配車サービスの成り立ちと経営者を見比べると、ビジネスを成功させるための共通点を持ちながらも理念の違いと評価のポイントの違いが明確で興味深いです。

規制に立ち向かい、既成概念を打ち破る

ホテルのアップグレード並みに嬉し買ったMKタクシーのサービス!

京都が発祥のMKタクシーが世間から注目を浴び、支持を得た最大の理由はドライバーの接客の良さと、既成価格への反抗だと言えるでしょう。

サービス業でありながら、接客に対する概念が希薄であった業界に於いて社員教育を徹底して行う。言葉遣いや気配りはもちろん、制服は森英恵デザインで統一。

若き頃MKタクシーを利用して、その接客ぶりに感動をした記憶があります。

それまでのタクシー運転手のイメージはあまり良くなく、行き先を告げる時に舌打ち、タメ口、乗客完全無視で、聞きたくもないラジオから流れる演歌を聞かされる、下手すると鼻唄まで聞かされる・・・なんてこともあった時代ですから!

何の概念もなくMKを拾った時には、思いがけず予約していたホテルがアップグレードされていた時のように運転手さんのマナーの良さに、嬉しくて、満足した気持ちになったもんです!

さらに、同一地域同一料金という当時の運輸省の規制に歯向い、業者側でありながら料金の値上げに断固反対の姿勢を貫き、価格の高騰に歯止めをかける姿勢に、心中喝采を送っていました。

スマホの普及で生まれたウーバーのサービス

ウーバとは、タクシー会社や個人が保有する車を使って、空いている時間を利用してライドシェアするサービスです。

スマホから、ウーバーに登録している近くの車を呼び出すことができるので、待ち時間なく車を捕まえることができ、料金はあらかじめアプリを通じたクレジット決済なので現金は要らず、しかも嘗ての乗客から運転者の評価や、車種までスマホで見れるのでどんな運転者かも予めわかるので安心、とっても便利な仕組みなのです。

しかし、ウーバーはタクシー会社ではなく、自社の車は保有しない、ドライバーと乗客を結びつけるサービスを提供しているIT企業です。

国によって事情は違い、日本では2種免許や事業免許の必要性など参入ハードルがあります が、ウーバーの仕組みは世界的に瞬く間に広ま李ました。

MKタクシーも、ウーバーも、既成概念を打ち破り、業界の悪しき慣習などから真っ向に立ち向かい成長を遂げてきたと言えます。

MKタクシーとウーバーのハラスメント事情

青木社長、それパワハラでっせ!

MKタクシーの青木会長はその昔、乗務員の意識教育のために、ドライバーを京都市内の繁華街に強制的に連れて行き、大声で「ありがとうございます」と街行く人々に声をかけさせたそうです。

乗務勤務外の無理やりな行為に反感を覚え、多くの乗務員が会社を去ったそうで、考えようによっては「パワハラ」と取られるかもしれません。

言い出したこちは絶対にやり通す青木氏の性分は、時には部下に対して強要という形をとることになりますが、それでも常に信念を貫き通したそうなのです。

当然経営者の姿勢は社風となります、感動する接客を提供する職場にはピリッ! とした空気が流れているに違いないと思います。

トラビスさん、セクハラの原因はあんたとちゃうか?

昨年、ウーバーの元技術職の女性社員が発したツイッターの記事が、世界的に話題とな李ました。

その内容は、社内では公然とセクハラ行為が行われており、これを人事部に訴えてもセクハラ行為を行っている人間が企業側に優秀な人材な場合、もみ消されるか、セクハラ行為を受けた側がウーバーを去らなければならない慣習であるというショッキングな内容でした。

この告発投稿は瞬く間に広がり、問題となった企業体質改善を余儀なくなくされたウーバーは、内部調査の結果20名もの幹部社員の解雇処分にまで広まりました。

企業にとって利益をもたらす優秀な人材こそが財産、生き馬の目を抜くシリコンバレーではウーバーのみならず意外にも多くが似た企業風土である傾向が強いことがこの事件で明るみにもなりました。

因みに、この事件の直後にCEOのトラビス・カラニック氏がウーバーの運転者を罵倒するドライブレコーダーがユーチューブ配信され、併せて話題になりました。

社会貢献・金儲け・自己実現・起業家の評価は誰が行うのか?

仕組みを提供するウーバー

起業家が事業を立ち上げ、多くの苦労の果てに掴むものとはいったい何だろうか?話題となったトラビス・カラニック氏のビデオをみると考えさせられます。

カラニック氏は 偶然乗り合わせたウーバーのドライバーから、ウーバーの料金体系に設定価格が安すぎると、ウーバーの仕事をするために1000万も投資したのに破産状態にあるとと不満を訴える運転手に対して

「いいか? 世の中には自分で責任を取ろうとしないやつがいる。そういうやつはすべてを人のせいにする」と切り捨てました。

英語のニュアンスがよく解らず正しい判断とは言えませんが、私自身はトラビスさんの言い分は、それほどひどい内容とは思えませんでした。

ドライバーはウーバーの仕組みを利用して、自分の車で乗客を運ぶ仕事をする。料金はあらかじめ登録したクレジットカードから引かれ、一定額がドライバーに振り込まれる仕組みです。

アメリカ特有のチップの問題や、参入当社の運賃の引き下げなどドライバーにとっての不満など愚痴りたい気持ちがあるのは解りますが、その仕組みを選んだのはドライバーです。当初の契約が違うとの主張もしていましたが、その主張も怪しく、ドライバーの解釈は誇張された感があり、なんだか努力のしようもあると思えるものでした。

トラビス・カラニックとは何者か?

トラビス・カラニック氏は名門UCLA出身で、2つのIT事業を立ち上げ成功と失敗を繰り返してきた起業家です。

1社目の会社はネットワークビジネス系の会社は順調に成長しますが、投資家に契約違反を突かれ、更にそのビジネスの仕組みを使うと違法ダウンロードが可能だということが解り26兆円もの損害賠償を起こされ、企業を破産させました。

2社目も順調な業績だったようですが、共同経営者の裏切りと、信じていた税理士の裏切りによる脱税の発覚で、立ち上げた企業を24億円で売却しています。

強靭です!26兆円なんて韓国の国家予算並みです!

人間失敗しても生きていけるんですな!!

間も無く立ち上げた事業も、失敗とはいえ24億で売却です!当然手元には一円も残らないにしても、この武勇伝だけで酒を呑んで余生を過ごせそうです。

しかし、さらに挫折から這い上がりウーバーを創業した、そんな男から先の言葉が出てきてもなんら不思議ではないように思います!ハイ!!

商売の本質を貫いたMKタクシー

高い運賃でも既得権益に守られ、横柄な態度でも許されるタクシーの運転手、競争のない横並びの中で、お客様不在のサービスは商売とは言えない。

MKタクシーの給与体系は、売り上げから一定の歩合を差し引く給与体系とは違い、売り上げから減価償却費や制服代などの一定経費を固定費とし差し引き、そこからマージンを差し引き残りを給与とする仕組みを取り入れています。固定経費を差し引いているので、マージンの比率は一般のタクシー会社よりうんと低く設定されています。

つまり、頑張ったらその分取り分は高くなるが、頑張れないものは固定費を引かれるので実入りが少ない!感覚としてはより個人経営に近いと言えるが、これは商売の本質であると思えます。

MKタクシーのドライバーは業界の慣習が染み付いた経験者は採用せず、未経験社を1から教育することで有名です。

青木定雄とは何者か?

青木定雄は韓国生まれで、留学で来日した、いわゆる在日ではない韓国人です。

良いサービスの提供でお客様から認めてもらう。在日差別からくる負けん気とは若干イメージが違う、商売人としての高いプライドがあったようです。

そのルーツは韓国の母親からの影響で、旅館を営む実家では例え、客の都合で宿泊が取りやめになり食事が余っても、母親はほんの1口も食べさせてくれなかった。次に来る客のために保存したのだ。青木がご馳走にありつけたのは、腐る直前だったという。

既得権益を守ろうとする同業のタクシー経営者からの嫌がらせ、横並びで規制概念を押し付けてくる運輸省との長い長い戦いの末に、日本を代表するサービスのタクシー会社として認められたのでです。

理念の違いが全てある

新たなサービスの提供により、それを利用する人にとって便益がある。

二つのタクシー関連会社はともに成長をしました。

トラビス・カラニック氏は度重なる失敗にも負けない強い精神があります。起業家としての強靭なプライドは3度興した企業をも成功させましたが、またしても苦境に立たされ、追われようとしているのはなぜでしょうか?

彼が生み出した「仕組み」は3社とも大きな利益をあげている、社会のニーズに答えたものではあることは間違いないのに…… 。

「仕組みは」受け入れられるが、経営は受け入れられない、88年の人生を全うし、従業員からその理念を理解され、惜しまれつつも旅立った「心を伝える」ことをプライドとして商売としてきた大翁との違いは明白であろうと思います。

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ono@comima.info

おのやすなり 日本コミュニテイー・マーケテイング研究会(通称コミマ) 代表 「社員のための社長史」「現代から見たあなたの過去と未来」「my life my art」などライフストーリーを伝えたいメッセージに変換し、発信を行っています。 1964年生まれ:大学卒業後、宝飾・アパレルチェーンにて、ストアマネージャー、エリアマネージャーとして勤務。その後温浴レジャー事業プロジェクトを計画していた企業に転職。取締役事業部長として複数の温浴施設、飲食店の開発、運営に携わる。 組織運営、顧客との関わりの中で重要な「理念」を伝えることを目的として会社設立。