幻冬舎編集責任者から教わる編集者に必要な3つの素質

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 一般的に編集者とは、出版社に勤務して書籍や雑誌を編集する人を指している。編集の仕事は、まずこれなら売れるだろうという企画を立て、その企画を実現させるためには誰にどんな仕事を依頼すればいいのか、そのためにはお金がどれくらいかかるのかを考えることから始まる。

そして依頼した文章や写真などを確認して、印刷所に渡し、またその企画が形になる際のデザインや宣伝用コピーのアイデアを練ったり、商品ができ上がったら、それを売るための戦略も考えなければならない。

このあたりの仕事内容は、作る本や雑誌の種類によって大きく変わってくる。たとえば、エッセイや小説を編集する文芸書編集者にとって一番大切な仕事は、作家から原稿をもらうことであり、ファッション雑誌の編集者であれば、今どんなスタイルが人気なのかを分析して、どんな切り口で誌面を作るのかを考えることがもっとも重要になってくる。

テレビドラマによく登場する「優雅で知的な出版社勤務」というイメージは、一部の大手出版社社員を除いてほとんどどこにもない。多くの編集者は労働時間の割には少ない給料で、膨大なデスクワークを抱え、休日出社を余儀なくされているというのが現実だ。

また芸能人や有名作家と友だちづき合いができるなどといわれるが、そういう職業の人たちとうまく仕事をするためには、企画力や文章力のほかに特別な神経が必要であるといわれている。

13歳のハローワーク 村上龍

 
 作家村上龍のミリオンセラー「13歳のハローワーク」は513種類の職業をエッセイとしてまとめたもので、上記はその中の一つ、編集者の仕事について書かれた文章です。
 このミリオンセラーを村上龍氏とともに企画し、世に出した編集者が現在幻冬舎の最高編集責任者である石原正康氏である。
 出版業界では知らない人はいないと言われる石原氏だが、編集者に必要な素質とは一体どういったものかを答えています。

 編集者は優秀な戦略家であることが大事

職業図鑑を作ろう!

最初の発想はここから始まったそうです。

13歳という年齢では見えてこない(実際に成人していてもですが)、様々ある職業が一体どういったものなのかを客観的な視点で捉えた作品作りに取り組む。

 今までにない作品であり、しかもそれを売れっ子作家が執筆する。

 読む本ではなく見る(調べる)本を村上龍が著すという冒険に、当初は全く自信がなかったそうです。

 しかしこの作品は、興味を持った子供のみならず、親から子へのプレゼント、警察官から不良少年に推薦本、 学校教育関係者のバイブル、図書館関連の蔵書、図鑑であるがために流通の幅が大きく広がり大ベストセラーとなります。

 数年後に「55歳のハローライフ」は、先の成功に慣い、シルバーエイジ手前再就職図鑑として、再び村上龍氏に企画を持ち込みますが。

 こちらは、この年代からの職業があまりにも少なく、現実の厳しさを目の当たりにして同じ企画を断念し、定年を前にした人々の悩みや生き方を短編小説に変更したそうです。

 新聞連載は珍しい村上氏の作品として、数社の地方紙の連載という形で取り上げてもらい、そこからヒットしてゆきます。

 全国紙ではなく、地域地域で圧倒的な強みを持つ地方紙の方がターゲットである読者の層を掴みやすいと考えての戦術で、これが見事に当った形となり、NHKの連続ドラマにもなりました。

編集者は作家との恋愛関係になれるかが大事

締め切りを守らない作家にやきもきしながら、なだめたり、すかしたり。編集者とはそんなイメージだけが先行しますが、優秀な編集者は作家と恋愛関係にあるくらいの心の距離感を保てる人でないとならないそうです。

作品は作家が書きますが、夫婦で事業を成し遂げる、作品を創る人、それを出版する人という関係を飛び越え、お前のために書く、と言うくらいの関係にならなければ良い作品を取るこ編集者には慣れないそうです。

プロデューサーとしては作家が何を考え、どういった思考状態になっているのか、まさに一心同体となるくらいに相手に惚れ込む必要があるそうです。

相手のことを考えて、考えて、考え尽くす、どこで悲しみ。どこで喜び、どこで傷つくのかがわかるくらい距離を縮めるということでしょう。

担当の作家は一人とは限りません、多くの売れっ子作家や作品を世に出す優秀な編集者に求められる人間力は相当なものですね。

優秀な編集者に共通する3つの事柄

①愛嬌がなければ絶対に無理

石原氏曰く、編集者の絶対条件は1に愛嬌、2に愛嬌、何がなくともまず愛嬌と言い切っています。

作家と恋人関係の距離とはいえ、それはあくまでも例えである。距離が近くなればなるほど、見えなくても良い部分まで見える部分が多くなり、許せることとそうでないことも生じる訳で、そういった時にでも”まあいいか”と思わせる可愛気がなくては務まらない。うなずける話です。

編集者に限ったことではないですが、利害関係や認める、認めない以前に”憎めない人間味”が必須であり、平たく言えば、モテる人でないといけないということだろうと思います。

駆け出しの頃、締め切りを守らない大作家(宮本輝氏)が、締め切り間近に自分がオーナーである馬が死んだのでとてもペンを取る気にならない・・・と言い訳を言ってきたそうです

”馬が死んでも先生のペンは走るでしょ! ”

と言い返したところ、ニヤリと笑って執筆に取り掛かってもらったというエピソードを話しておられましたが。

 新人でありながら、このニヤリとさせるような関係を築けたこと。これ以来担当者として大いに気に入ってもらえたそうで、この愛嬌が大事なことなんだろうなと思います。

②感想をはっきりと述べること

はっきりとした意見を述べられることは、相手のことを真剣に考えるからこそできることであり、愛嬌があるからこそ許されることでもはあると思います。

これが許される関係性ができなければお互いが成長できないし、良い仕事もできないのでしよう。

担当の作家が作った作品は全て自分が書いたような思いになるのだそうで、そこまでとことん惚れ込むことができるからこそ信頼される。遠慮があるような関係を超えてこそだということもポイントだそうです。

③敵わないと思わせるくらい何かにのめり込むこと

人間的な魅力を磨くために大切なことは、何でも良いから一つのことに寝食を忘れるくらい打ち込める事がある人、あるいはそういった事ができる人だと言います。

そして、それを極めるということは誰にも叶わないような事が少なくとも一つはあるということです。

知識と空想力に富んだ作家が敵わないと思うようなことが何か一つでもあれば、認めてもらえるきっかけになると言います。

3つの条件はどれも、人間的に魅力がある人であれということに尽きるかもしれません。誰にでも、という訳ではありませんが相当モテる要素がなければならないようですね!

編集者とは人間を相手にした商売です、しかも相手は作家という観察力や洞察力に長けた強者ですから当然といえば当然です。

インタビュアーの早川氏が、逆インタビューを受けて受け答えをしているなど、なるほどな・・!と思わせる方でした

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ono@comima.info

おのやすなり 日本コミュニテイー・マーケテイング研究会(通称コミマ) 代表 「社員のための社長史」「現代から見たあなたの過去と未来」「my life my art」などライフストーリーを伝えたいメッセージに変換し、発信を行っています。 1964年生まれ:大学卒業後、宝飾・アパレルチェーンにて、ストアマネージャー、エリアマネージャーとして勤務。その後温浴レジャー事業プロジェクトを計画していた企業に転職。取締役事業部長として複数の温浴施設、飲食店の開発、運営に携わる。 組織運営、顧客との関わりの中で重要な「理念」を伝えることを目的として会社設立。

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